着床前診断とは?受けるための条件とメリット

着床前にも診断の概要

着床前診断(Preimplantation Genetic Testing, PGT)は、体外受精(IVF)で得られた胚の染色体や遺伝子を検査し、特定の遺伝性疾患や染色体異常を調べるための検査です。胚の異常を早期に発見することで、健康な胚のみを選択して移植することができ、妊娠や出産のリスクを軽減することが期待されています。

出生前診断と着床前診断の違い

着床前診断と出生前診断には実施時期と方法の違いがあります。

着床前診断とは

着床前診断は、体外受精によって得られた受精卵を、子宮に着床させる前に検査する方法です。遺伝子や染色体の異常がないことを確認し、健康な受精卵のみを選び移植するため、妊娠成立前にリスクを軽減する手段として注目されています。

出生前診断とは

出生前診断は、妊娠が成立した後に胎児の健康状態を確認するための検査です。妊娠初期や中期に実施され、羊水検査や母体血清マーカー検査、超音波検査などがあります。胎児の染色体異常や遺伝性疾患を特定するための検査方法ですが、妊娠後のためリスクが伴う場合もあります。

着床前診断の実施方法

着床前診断は、以下の手順で実施されます。

1.採卵および体外受精:採卵した卵子と精子を体外で受精させます。

2.胚の培養:受精卵を胚盤胞(5~6日目の胚)まで培養します。

3.生検:胚の細胞の一部を採取し、遺伝子や染色体の異常を調べます。

4.解析:遺伝子検査により、胚の健康状態や遺伝情報を確認します。

5.移植:健康で異常のない胚を選び、子宮内に移植します。

染色体とは何か

染色体は細胞の核内にあり、遺伝子情報を担うDNAが詰まった構造体です。人間の細胞には通常46本の染色体があり、これらが正しく揃っていることが健康な体の発育に欠かせません。染色体に異常があると、様々な先天的疾患や遺伝的な健康リスクが発生する可能性があります。

胎児の染色体の変異

染色体異常には、構造的な変化と数的な変動の2つのタイプがあります。

染色体の構造の変化とは

染色体の一部が欠損、重複、転座、逆位するなどの構造的な異常を指します。これにより、遺伝子が本来の機能を果たせなくなることがあります。

染色体の数の変動

染色体の数に異常が生じる場合もあります。通常46本の染色体が47本や45本になると、例えばダウン症候群(21番染色体が3本ある)などの疾患を引き起こすことがあります。

着床前診断の対象者

着床前診断は、以下のような方々に対して推奨されることが多いです。

•家族に遺伝性疾患を抱える方がいる場合

•高齢出産を予定している方(母体年齢が35歳以上)

•不妊治療を続けても妊娠が成立しにくい方

•流産を繰り返している方

また、性別の選択が可能な一部の国では、家族の構成や遺伝的要因を踏まえて希望する性別の胚を選ぶこともあります。

日本における着床前診断に関する報告

日本では、着床前診断は倫理的・社会的な観点から慎重に取り扱われています。現在、厚生労働省と日本産婦人科学会のガイドラインに従い、特定の医療機関でのみ実施されています。実施基準は厳格で、通常は医師の指導のもとで必要性を判断したうえで行われます。

着床前診断のメリット・デメリット

着床前診断のメリットとデメリットには次のような点があります。

•リスク軽減:染色体異常や遺伝性疾患を事前に発見し、健康な胚のみを選択して移植できるため、将来的なリスクを軽減します。

•妊娠の可能性向上:健康な胚のみを移植することで、妊娠率が高まることが期待されます。

•家族計画の自由度:特定の疾患や性別を選びたい場合、希望に応じた家族構成が可能になります。

着床前診断のデメリット

•費用が高額:通常の体外受精よりも費用がかかります。

•技術的な制約:検査の精度は100%ではなく、完全にリスクが排除できるわけではありません。

•倫理的な議論:日本では、着床前診断を巡る倫理的な問題が議論されています。性別選択や遺伝子の選別に関しては、社会的な問題も含まれるため、慎重な判断が必要です。

着床前診断の手順

1.採卵と体外受精:卵子と精子を体外で受精させ、胚を得ます。

2.胚盤胞培養:受精卵を胚盤胞まで培養し、着床前診断の準備を整えます。

3.生検:胚の一部を生検し、DNAサンプルを採取します。

4.解析:染色体や遺伝子の状態を確認し、健康な胚を選択します。

5.移植:日本国内で選ばれた健康な胚を子宮に移植し、妊娠の成立を目指します。

まとめ

着床前診断は、家族計画において重要な手段の一つです。遺伝性疾患や染色体異常のリスクを軽減し、健康な妊娠をサポートするために役立ちますが、倫理的な問題もあるため、事前に十分な情報収集と医師の指導が必要です。日本国内で完結するシステムも整い、より安心して利用できるようになっています。適切な判断のもとで、家族の願いに寄り添った計画を進めましょう。

この記事の監修者
この記事の監修者

キッタウィー・ラッタナワタナシン

SMILE IVF CLINIC 院長

一般不妊治療、人工授精、体外受精、卵子凍結など幅広く対応

住所 アリヒルズビル21階
428, Ari Hills Bldg. 21st Floor,Phahonyothin 10, Phahonyothin Road,Samsennai,Phayathai, Bangkok, Thailand 10400

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